いま、通信各社は通信サービスの枠を超えデータサービスへの展開を目指しています。そのなかで各社はテレビ会議やネットワークセキュリティサービスといった新たなデータサービスを提供するには既存の特定用途向け通信設備は適切でないということに気付いています(図 1)。常に変化を続けるビジネスニーズや顧客需要を考えれば、通信会社は柔軟なアプローチをもってコスト効率の高いネットワークアーキテクチャ、迅速なサービス提供、無駄のないネットワーク管理を目指さねばならないのです。ネクスコムでは、このためのネットワーク通信サーバー NSA 7130 を開発しました。これは、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)の枠組みでネットワーク機能仮想化(NFV)を実現するソリューションです。
汎用サーバーの必要性
従来の通信サービスは特定用途向け通信装置によって提供されます。こうした装置は、それぞれメーカーの異なる通信チップを用いて各ネットワーキング機能を実行する複数のコンピューティングボードで構成されています。しかし、いまやデータ通信分野で新たなビジネスチャンスの開拓を目指す通信各社は、ネットワーキングとデータサービスの両方を提供することができ、かつ UTM(統合脅威管理)、負荷分散、oIP(Voice over IP)などのための専用設備を展開する必要のない新たな方法を模索しています。
そうこうしている間にも通信テクノロジーは進化を続けていますが、先端的な機能を導入するにはほとんど必ずといっていいほどインフラ整備が必要になります。こうした設備投資は甚大なものとなり、回収には年単位の時間がかかります。いうまでもなく通信会社はこうした状況を回避したいと考えています。そこで必要となるのが、仮想化、相互運用性、拡張性によって様々な機能を統合し、通信機能とデータセンター機能を併せ持つことができる汎用的な大容量サーバーの活用です。
スピードと簡易性
仮想化は汎用型大容量サーバーの必須要素です。また、通信サーバー室の全サーバーのハードウェアリソースを相互運用することで共通のリソースプールを作成し、ネットワーク機能に活用することが求められます。高スループットの接続性もまた不可欠な要件です。これらの要件を満たすため、ネクスコムネットワーク通信サーバー NSA 7130 では Intel Xeonプロセッサ E5-2600 v3 製品シリーズに加え
て Intel® C612 チ ッ プ セ ッ ト、Intel® EthernetController XL710-AM2 を採用しています。仮想化によって複数ネットワーク機能を単一サーバーに統合することで、ネットワーク運営における管理の手間が軽減され、高いサーバー密度、スペースの効率的活用が実現します。しかし、それでもやはり相当な演算・メモリのリソースが必要です。そこで、単一サーバー上で複数のゲスト OS、仮想マシンを処理するため、NSA 7130 は 2 ソケット構成とフルレンジの Intel Xeon E5-2600 v3 製品シリーズに対応しています(図 2)。このサーバーには最大で 24 の演算コア、最新 DDR4 テクノロジーに対応した最大 512GB のメモリを搭載可能です。さ ら に、NSA 7130 で は Intel VT に よ って実現される数々の機能を利用して仮想化 NFV ア プ リ ケ ー シ ョ ン 展 開 を 最 適 化・高 速 化 す る こ と が で き ま す。 ま た、 などのプラットフォームにより広範な仮想化の強化が可能です。また Intel アーキテクチャベースのサーバーには、NFV アプリケーションのパフォーマンスや予測可能特性の向上を可能にする一連の構成機能が備わっています。
1 台のサーバーのように挙動
必要に応じてネットワーク機能の拡張が可能なネットワーク環境を構築するためには、通信サーバー室のサーバーはひとつの巨大な仮想サーバーのように挙動し、ネットワーク機能から分離される必要があります。これが、NFVの核心です。NFV を実装するには、データセンター全体の演算・ストレージ・ネットワーキングリソースの大規模プール(すべてダッシュボードから管理)を制御するためのオープンソースクラウド OS である OpenStack のようなネットワークオーケストレータが必要になります i。なお、OpenStack は通信サービスの分野で PaaS(platform-as-a-service)として広く使用されています。通信会社がネットワーク負荷の動的割当てを行なうためにはオーケストレータが不可欠です。オーケストレータは、事前定義したアプリケーションや運用ポリシーに基づいてネットワークのプロビジョニング・構成を自動化し人為的ミスの発生しやすい手動操作を削減します。新たなサーバーを調達する必要なく、既存ハードウェアの利用可能な演算・ストレージ・ネットワーキングリソースを活用して新規サービスを展開でき(図 3)、リリースしたサービスはビジネス上のニーズの変化に応じて柔軟にスケールアップ、スケールダウンすることが可能です。つまり、通信会社は NFV を活用することで、ネットワーク管理の簡略化、精度の高いネットワークトラフィック管理、新サービスの迅速なリリースといった利点を享受できるのです。
高負荷通信サーバーでの利用を想定し、NSA 7130に は、4 つ の 10GbE ポ ー ト、8 つ の 1GbE カッパーポート、8 つの 1GbE ファイバーポートを含む高速ネットワークインターフェースが搭載されています。さらに、2 つの第三世代 PCIex8 スロットが搭載されているため、サービス 需 要 の 拡 大 に あ わ せ て ネ ク ス コ ム Smart Network Interface Cards(SmartNIC)、LAN、HDD モジュールにより演算・ストレージ・ネットワーキング性能を拡張することが可能です。通信サーバー室環境に関しては、17 インチ(450mm)ラックマウント式で標準的な 2ポストラックに直接取付け可能です。48V DC
電源についても述べておく必要があるでしょう。通信サーバー室では安全のため低電圧電源が使用されていますので、この電源設計により電力変換トラブルとは無縁になるでしょう。
通信用の NFV
今日の通信環境においては、最新の通信技術により通信速度への期待値が上がっており、こうした期待に応えるためには帯域幅制御のためのサーバーのアップグレードが不可欠です。こうしたテクノロジーの移行を効率化するため、NFV 対応の NSA 7130 では負荷分散、サービス品質(QoS)、さらにはメディアサーバーアプリケーションの実装の迅速化が可能で、動画ストリーミングなど帯域幅消費の激しい Web アプリケーションにおけるエンドツーエンド型のユーザーエクスペリエンスを強化できます。クライアント構内機器(CPE)でも NFV の利点を受けることができます。通信会社はCPE経由で法人クライアント向けに無線ブロードバンドサービスを提供していますが、NFV のコンセプトでは、NSA 7130 ベースの CPE をいくつかの仮想マシンに分割し、仮想プライベートネットワーク(VPN)、ファイアウォール、負荷分散アプリケーションを実行させることができるのです。さらに重要なのは、NFV 対応 CPE がその他の NFV 対応機器と相互運用可能であるという点です。このため、CPE は通信サーバー室の演算ノードとして機能し、ハードウェアリソースを別のネットワーク機能アプリケーションから評価したり、逆に別の機器のリソースを評価することが可能になります。この柔軟性により、設備投資や運用という観点から、収益性の高い新サービスを低コストで展開できます。
ソフトウェア定義インフラストラクチャ
一元化されたプログラマブルなネットワーク イ ン フ ラ を 構 築 す る た め、 ネ ク ス コ ムNSA 7130 では Intel DPDK を活用し、データプレーンと制御プレーンが分離された SDN フレームワークを実装します。Intel DPDK(仮想スイッチ全体のパケット処理性能を向上させるために設計された一連のソフトウェアライブラリ)では、単一の Intel Xeon プロセッサ上の 64 バイトパケットについて 1 秒当たり8,000 万パケット以上(Mpps)の L3 フォワーディングスループットを可能になっています ii。Intel DPDK では、パケット処理が汎用大容量サーバーに紐付けられるため、ネットワークプロセッサ(NPU)、アプリケーション固有集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲート配列(FPGA)といった専用ネットワーキングコンポーネントが不要になります。一方、制御プレーンは SDN コントローラによって管理され、SDN コントローラは NSA 7130がサポートしている標準通信インターフェース(OpenFlow など)を通じて物理・仮想スイッチと通信します。
結論
現在、通信会社はデータ通信分野での新たなビジネスチャンスを模索しており、既存サービスプロバイダーとの直接競合を前に、各社一様に少ない設備投資と運用費で収益出すことを目指しています。そこで NFV・SDN を実装するプロバイダについては、ネクスコム NSA 7130 を活用することで、ネットワーク抽象化を通じて他のネットワークプラットフォームと相互運用可能な汎用大容量サーバーを得ることができ、同時にポリシーベースのネットワーク自動化によってネットワークのプロビジョン、構成、管理を簡略化できます。骨の折れる手動処理が必要になる従来の特定用途向け通信設備とは異なり、ネクスコム NSA 7130 ではハードウェアリソース割当ての最適化を通じてより迅速に、よりスケーラブルに新サービスをリリースすることが可能であるばかりか、大幅なコスト削減も実現します。
The white paper is also published on Intel® Embedded Community at http://embedded.communities.intel.com/docs/DOC-8528